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オフィスビルや興行施設の所有者は要チェック!建築物衛生法の基礎知識
建築物衛生法は、店舗や事務所、学校など多数の人が利用する建築物の維持管理に関する事項を定めた法律のことです。建築物衛生法の対象となる建築物を所有している人は、同法に基づいて建物を維持管理することが義務づけられています。
本記事では建築物衛生法の目的や対象となる施設、違反した際の罰則、ビル管理法との違いなどについて解説します。
目次
建築物衛生法とは、建築物の衛生的な環境の確保を図るための法律
建築物衛生法とは、建築物の維持管理に関する事項を定めた法律のことです。
正式名称を「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」といい、多数の人が使用または利用する建築物の、衛生的環境を確保することを主な目的としています。
建築物衛生法が公布された背景
建築物衛生法が公布される以前、日本では建築物の高層化や大型化が進み、その数も年々増加する傾向がありました。当時は建築物の維持管理について明確な規定がなく、それぞれの管理方法は所有者に一任されていました。そうした結果、建築物の空調設備や給排水設備が不衛生な状態のまま放置されるケースが増加し、伝染病の発生やねずみ・虫の増加など、衛生上の問題が頻発するようになったのです。
こうした実態に鑑み、国では公衆衛生の向上および増進に資する法律として、大多数の人が利用する建築物の衛生的な環境の確保を義務づける建築物衛生法を公布するに至りました。
建築物衛生法の対象となる施設
建築物衛生法の対象となるのは、特定建築物と呼ばれる建築物です。特定建築物や、多数の人が使用または利用し、かつその維持管理について環境衛生上、とくに配慮が必要なものとして政令で定められたものを指します。
厚生労働省では建築物衛生法における特定建築物を、以下のように定義しています。(※)
1. 建築基準法に定義された建築物であること
2. 1つの建築物において、特定用途の1または2以上に使用される建築物であること
3. 1つの建築物において、特定用途に使用される延べ面積が3,000平方メートル以上であること
2の特定用途とは以下に掲げるものを指します。
1. 興行場
2. 百貨店
3. 集会場
4. 図書館
5. 博物館
6. 美術館
7. 遊技場
8. 店舗
9. 事務所
10. 学校(研修所を含む)
11. 旅館
ここでいう興行場とは、映画や演劇、音楽、演芸等を公衆に見せる、または聞かせる施設のことです。具体的には映画館や劇場、寄席、音楽堂、野球場、見世物小屋などがこれに該当します。
7の遊技場とは、設備を設けて公衆に麻雀やパチンコ、卓球、ボーリング、ダンス、その他の遊技をさせる施設のことを指します。
なお、体育館やその他スポーツをするための施設(フィットネスクラブなど)は、延べ面積にかかわらず一般に特定建築物には該当しません。ただし、映画館など興行場との複合施設である場合は特定建築物になり得ます。
※出典:厚生労働省.「建築物衛生のページ」.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000132645.html,(入手日付2023-02-27).
建築物衛生法における衛生管理基準
建築物衛生法第4条では、特定建築物について、建築物環境衛生管理基準に従って当該建築物の維持管理をしなければならないと定めています。(※)
建築物衛生管理基準とは、空調や給排水の管理、清掃、ねずみ・昆虫等の防除、その他環境衛生上良好な状態を維持するのに必要な措置について定めた基準のことです。具体的な基準について、設備などの項目ごとに解説します。
※出典:厚生労働省.「建築物衛生のページ」.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000132645.html,(入手日付2023-02-27).
空気環境の調整
建築物衛生法における空調設備とは、エアフィルターや電気集塵機などを用いて外から取り入れた空気などを浄化し、温度や湿度、流量を調節して供給できる機器・設備を意味します。
空調設備を設置している居室では、おおむね以下の基準に適合する必要があります。(※)
<2ヶ月に一回、作業日の午前と午後の1日2回以上測定を行う>
浮遊粉じんの量 | 0.15mg/立方メートル以下 |
一酸化炭素の含有率 | 100万分の10以下(令和4年4月1日以降は100万分の6以下) |
二酸化炭素の含有率 | 100万分の1,000以下 |
温度 | ● 17℃以上28℃以下(令和4年4月1日以降は18℃以上28℃以下) ● 居室における温度を外気の温度より低くする場合、その差を著しくしないこと |
相対温度 | 40%以上70%以下 |
気流 | 0.5m/秒以下 |
ホルムアルデヒドの量 ※新築、増築、大規模改修工事完了後の6/1~9/30までに実施 |
0.1mg/立方メートル以下 |
また、空調設備を設けている場合は、病原体の汚染を防ぐために以下のような措置を講じる必要があるのです。
● 冷却塔および加湿装置に供給する水を水道法第4条に規定する水質基準に適合させるための措置
● 冷却塔・冷却水の汚れを1カ月以内ごとに1回点検す(使用期間中)
● 冷却塔、冷却水の水管を1年以内ごとに1回清掃する(使用期間中)
● 加湿装置の汚れを1カ月以内ごとに1回点検する(使用期間中)
● 加湿装置を1年以内ごとに1回清掃する(使用前が多い)
● 空調内に設けられた排水受けの汚れおよび閉塞の状況の点検を1カ月以内ごとに1回行う(使用期間中)
※出典:厚生労働省.「建築物環境衛生管理基準について」.
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/,(入手日付2023-02-27).
給水の管理
特定建築物で人の飲用や炊事用、浴用その他、人の生活用のために水を供給する場合、水道法第4条の水質基準に適合する水を供給する必要があります。
給水管理では以下の措置を講じることが義務づけられています。(※)
● 給水栓における水に含まれる遊離残留塩素の含有率を100万分の0.1以上に保持する措置。7日以内ごとに1回の検査が必要。(東京都は毎日実施)
● 水が汚染されるのを防止するための措置(貯水槽の点検など)。1年以内ごとに1回の清掃が必要。
● 定期的な飲料水の水質検査(半年に1回16項目実施。ただし、16項目適合の場合は次回5項目省略できる)
● 水の色やにごり、匂い、味などに異常を認めた場合に都度行う検査
● 飲料水に健康被害のおそれがあることを知ったときに直ちに行う給水停止および関係者への周知
また飲料水の水質検査は、検査項目に応じて6カ月または1年ごとに1回実施しましょう。水源が水道や専用水道のみの場合、一般細菌や大腸菌等の有無、味・臭気・色度・濁度は6カ月ごとに1回、ホルムアルデヒドや塩素酸などの検査(毎年6/1~9/30までの間に実施)は1年ごとに1回行います。
地下水等を水源としている場合は、上記に加え四塩化炭素、ジクロロメタンなどについて3年ごとに1回検査する必要があります。
※出典:厚生労働省.「建築物環境衛生管理基準について」.
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/,(入手日付2023-02-27).
3.排水の管理
排水設備の正常な機能を維持するために、設備の清掃を6カ月以内ごとに1回行う必要があります。(※)
(東京都は排水槽の清掃は4か月以内に1回としている)
また、必要に応じて設備の補修および掃除を実施します。
※出典:厚生労働省.「建築物環境衛生管理基準について」.
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/,(入手日付2023-02-27).
4.清掃等
施設内の掃除、廃棄物の処理を行います。一般的な掃除は日常的に行い、大掃除は6月以内ごとに1回、定期的かつ統一的に実施します。(※)
※出典:厚生労働省.「建築物環境衛生管理基準について」.
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/,(入手日付2023-02-27).
5.ねずみ等の防除
ねずみや昆虫その他、人の健康を損なうような事態を招くおそれのある動物の発生・侵入の防止・駆除を実施します。ねずみ等の発生場所、生息場所、侵入経路、被害状況については6カ月以内ごとに1回調査を行いましょう。(※)
※現在は防除の観点から毎月点検(トラップ・薬剤塗布)が主流となっている
また調査結果に基づき、その都度ねずみ等の発生の防止措置を講じます。ねずみ等を防除する際は、薬事法の規定による承認を受けた殺鼠剤や殺虫剤を使用する必要があります。
※出典:厚生労働省.「建築物環境衛生管理基準について」.
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/,(入手日付2023-02-27).
建築物衛生法に違反した場合の罰則
建築物衛生法について、都道府県からの改善命令等に従わない場合には、30万円以下の罰金に処される可能性があります。(※)
特定建築物の所有者や、維持管理の権限を有する人については、違反の内容に応じて一年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される可能性もあります。
※出典:e-Gov法令検索.「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」.
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC1000000020_20220617_504AC0000000068,(入手日付2023-02-27).
ビル管理法との違い
ビル管理法とは、不特定多数の人が利用するビルの衛生的な環境を確保するための管理項目を定めた法律のことですが、実は建築物衛生法の通称のひとつです。特定建築物は国内に多数存在しますが、その多くがビルであるため、ビル管理法と呼ばれるようになりました。呼び方こそ異なりますが同一の法律のため、同法を遵守すれば問題ありません。
特定建築物の所有者は建築物衛生法を守る義務がある
不特定多数の人が利用する特定建築物を所有、占有している人や、その維持管理の権限を持つ人は、建築物衛生法に従って建築物を維持管理する義務があります。建築物衛生法に違反すると罰則の対象になるのはもちろん、建築物の衛生的な環境を確保できず、利用者に害をもたらしかねません。
特定建築物を保有している人は、建築物衛生法の内容をよく理解し、法に則った維持管理を心掛けましょう。