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住宅やオフィス・店舗で上手に換気を行う方法を教えます
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、政府はいかなる場所においても3密(密閉・密集・密接)を避けることを推奨しています。[注1]
とくに住宅やオフィス、店舗などの屋内環境は、屋外に比べて空気がこもって3密のひとつである「密閉空間」になりやすいので、適度な換気が必要不可欠です。
そこで今回は、住宅やオフィス、店舗における正しい換気の方法やポイントについてまとめました。
[注1]厚生労働省:新型コロナウイルス感染症への対応について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/yobou/index_00013.html
目次
換気とは空気の入れ換えを行うこと
正しい換気の方法を知るため、まず換気についてしっかり理解しておきましょう。
換気とは、室内の空気を新しいものに入れ替える行為のことです。
換気を行うには、空気の出入り口に加え、室内の空気を動かすための力が必要になります。
室内から見て、空気の入口は「給気口」、空気の出口は「排気口」といい、入口から新しい空気を入れることを「給気」、出すことを「排気」と呼びます。
一方、空気を動かすための力には、送風機(ファン)を用いた「機械換気」と、ファンを使用しない「自然換気」の2タイプがあり、給気と排気がどちらの方法を採用しているかによって、換気スタイルは大きく4つの種類に分類されます。
1. 給排気型
給気・排気ともにファンを用いる換気スタイルです。
機械の力で強制的に空気の入れ換えを行うため、換気効率が高く、面積の広い屋内施設でもスムーズに空気の入れ換えを行うことができます。
熱交換型換気システムを取り付ければ、排気の持つ熱を回収し、給気に供給できるようになり、室内を一定の温度に保ちやすくなります。
オフィスビルなど規模の大きい建物に多用される換気スタイルですが、原則としてダクトが必要になるため、設置には相応のコストがかかります。
また、自然換気に比べて運用コストも高くなるところがネックです。
2. 給気型(デマンドコントロール型)
空気の入口にのみファンを取り付ける換気スタイルのことです。主に病院や工場などに採用されています。
屋外からの空気はファンで機械的に取り込みますが、屋内の汚れた空気は給気の際に発生する押し出す力(正圧)を利用し、換気口から自然に排出されます。
デマンドとは「需要」という意味で、名前の通り、換気のニーズに合わせて必要なときに、必要な分だけ換気を行えるところが特徴です。
無駄な換気を行わないぶん、熱交換型換気システムを用いた換気よりも省エネ効果が高く、ランニングコストも抑えることができます。
ただ、熱交換が行われないことから、夏は高温多湿の空気が、冬は乾燥した冷たい空気がそのまま室内に入り込むため、給気口まわりで強い寒さを感じるコールドドラフト現象が起こりやすくなります。
また、室内に生じた湿気が正圧によって壁の中に侵入すると、外壁の内部で結露が発生しやすくなるため、注意が必要です。
3. 排気型
給気型とは反対に、屋外からの空気を自然に取り込み、汚れた空気をファンで排気する換気スタイルです。住宅などで最も一般的に用いられているスタイルで、ファンによって生み出された負圧の分だけ外から新鮮な空気が取り込まれます。
給排気型や給気型に比べて施工費が安いこと、また、正圧による内壁への湿気侵入を防げるところが大きなメリットです。
一方で、給気型と同じコールドドラフトが発生しやすい点や、花粉やPM2.5などの物質を室内に取り込みやすいところがデメリットとして挙げられます。
4. 自然換気(パッシブ型)
給気・排気ともに自然に任せるスタイルのことです。自然風や、温度差による空気の動きなどを利用して換気する方法で、窓を開けて換気する方法も自然換気に含まれます。
ファンを使用しないため、電気代やメンテナンス費といった維持費や施工費がかからず、換気にかかるコストを大幅に節約できます。
かつての住宅は至るところにすき間があったため、自然に任せるだけでも十分な換気を行うことが可能でした。
ただ、最近の住宅は気密性が高いぶん自然風が通りにくく、十分に換気できないおそれがあります。とくに室内外の温度差が少ない春や秋は空気が滞留し、換気不足になりやすいでしょう。
太陽光や風など、自然エネルギーを最大限に活用するパッシブデザインの住宅なら自然換気でも対応可能ですが、それ以外の住宅では何らかの対策が必要です。
「エアコンで換気できる」の誤解
給排気型に導入できる熱交換型換気システムは、暖かい(冷たい)空気を吸い込み、冷たい(暖かい)空気を出すという点ではエアコンと共通しています。
そのため、エアコンでも換気できると思われがちですが、実はエアコンによって吸い込まれた空気は、内部の熱交換器によって暖かい(冷たい)空気に交換されたあと、再び室内に戻されているだけです。
熱交換換気システムのように、屋外から新しい空気を取り込んでいるわけではなく、室内の空気を循環させているだけなので、汚染された空気を排気することはできません。
給排気型のように、冷暖房システムと熱交換換気システムを併用して省エネ効果をアップさせることは可能です。しかし、エアコンそのものに空気を入れ換える機能はありませんので、別途換気をする必要があります。
感染症対策に必須!換気の重要性
肉眼では見えませんが、空気中には感染症のもとになるウイルスや、花粉や粉じん、カビといった汚染物質が多数含まれています。
たとえば2020年初頭から全世界で猛威を振るう新型コロナウイルスは、患者のせきやくしゃみによって周囲に飛び散りますが、空気中をしばらく漂う細かい微粒子(エアロゾル)中では、3時間ほど感染力を保ち続けるそうです。[注2]
物に付着したウイルスや汚染物質は、消毒剤などを使えば物理的に除去できますが、空気中に含まれる物質は換気によって追い出すしかありません。
とくに人が密集した空間では、空気が汚染されやすいため、常時あるいは定期的な換気が必須です。
[注2]The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE:Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMc2004973
カビ防止にも役立つ
換気は感染症対策だけでなく、家に発生するカビ対策にも有効です。
換気をすると、水分を含んだ空気(湿気)を屋外に排気できるため、雑菌やカビ菌が繁殖しにくくなります。
湿気は夏場だけでなく、調理時の湯気や、部屋干ししている洗濯物など、いろいろな場所から生じるので、一年を通して換気を行い、湿気を逃すことが大切です。
シックハウス症候群対策にもおすすめ
シックハウス症候群とは、空気中に含まれる汚染物質によって発症する健康障害のことです。
代表的な例としては、建材の接着剤や塗料、防腐剤などに用いられるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレンなどが挙げられます。
汚染物質を吸い込むと、皮膚や目、のどなどに痛みや違和感を覚えたり、めまい・頭痛・頭重・倦怠感といった体調不良を引き起こしたりする原因になります。
汚染物質の多くは揮発性で、気温の上昇とともに空気中に多量に発散されますが、気密性の高い家では自然排気されにくいため、シックハウス症候群が多発しやすいといわれています。
汚染物質は空気とともに排気できるため、意識的な換気はシックハウス症候群の予防にも有効です。
気になる住宅の上手な換気方法
常に新鮮な空気の中で過ごせるよう、住宅で上手に換気する方法を3つご紹介します。
1. 24時間換気システムを活用する
最近の住宅は気密性が高いため、標準で換気口や24時間換気システムがついている物件がほとんどです。
ただ、一般住宅に多い排気型は熱交換型換気システムが導入されていないため、人によってはコールドドラフトや室内の気温の上昇(低下)を嫌って24時間換気システムをオフにしたり、部屋の換気口を閉じたりしてしまうことがあります。
現代の家は気密性が高く、意識的に換気しないと汚れた空気が滞留してしまうので、24時間換気システムや換気口はシーズンに限らず、常に使用することが大切です。
2. キッチンの換気扇を活用する
キッチンに備え付けられている換気扇は、排気量が非常に多く、一般住宅のなかで最も効率的に換気できる装置です。調理中に限らず、定期的にキッチンの換気扇を活用すれば、手軽に部屋の空気を入れ替えられます。
ただ、キッチン近くの窓を開けていると、換気の範囲がキッチン周辺に留まってしまいます。換気扇を回して換気する際は、キッチンからできるだけ離れた場所にある窓を開けるようにしましょう。
3. 窓を開けて換気するときのコツ
窓を開けて換気する場合は、1時間ごとに5~10分ほど空気の入れ換えをするのが理想とされています。
窓や部屋のサイズ、室内の汚染物質の種類などによって換気の効果が異なるため、できるだけこまめに換気するのがおすすめです。
効率よく換気するには、対角線上にある2つの窓を同時に開けると、空気の通り道ができて効率よく給・排気が行われます。
風のない日や、立地環境の影響で風が通りにくい場合は、風が入りやすい方の窓を細く開け、対角線上にある窓を全開にしましょう。
風は小さなすき間ほど勢いよく給気され、大きなすき間から排気されやすいという性質を持っているため、2つの窓の開け方を変えるだけで換気効率を高めることができます。
なお、室内に窓が1つしかない場合は、部屋のドアを開け、窓際で扇風機を回しましょう。このとき、扇風機は窓の方に向けると、屋外の空気を取り込みつつ、室内の汚れた空気を追い出すことができます。
オフィス・店舗の上手な換気方法
オフィスや店舗の場合、建築基準法に基づき、床面積や屋内の人数に合った換気設備の設置が義務づけられています。
ただ、大人数で会議を行う際や、お店が混雑する時間帯などは密集・密接になりやすいので、換気システムと併用して窓開けによる自然換気なども行いましょう。
また、換気口やファンが汚れていると換気効率が悪くなりますので、定期的にメンテナンスすることが大切です。天井や外壁に備え付けられた換気口やファンは清掃が難しいため、プロに依頼した方がよいでしょう。
熱交換型換気システムと連動しているエアコンはオフにしない
熱交換型換気システムとエアコンを連動させている場合、エアコンのスイッチを切ってしまうと換気システムも停止してしまいます。
暑い・寒いと思ったらエアコンの温度を調節し、常にONの状態をキープしておきましょう。