コラム

法律違反になることも?貯水槽の清掃・検査の義務と基本的な流れを紹介

貯水槽清掃と検査は法律で1年毎以内の実施が義務付けられています

分譲マンションやオフィスビルなどでは、施設内に貯水槽が設置されているケースが多く見られます。
大型の貯水槽は素人では清掃や検査を行えないため、ついメンテナンスを怠ってしまいがちですが、貯水槽を定期的に清掃・検査しないと法律に違反するおそれがあるので注意が必要です。
今回は、貯水槽清掃・検査に関する義務や貯水槽清掃・検査の流れについて説明します。

貯水槽の清掃・検査は法律で義務づけられている

貯水槽の清掃・検査は、「水道法」と「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管法)施行規則」という2つの法律によって定められています。
以下では、それぞれの法律で、貯水槽の清掃・検査がどのように定められているのかをまとめました。

水道法

水道法第34条の2では、貯水槽について以下のように定めています。[注1]

● 簡易専用水道の設置者は、厚生労働省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない
● 簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、厚生労働省令の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない

ここでいう「簡易専用水道」とは、「水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であって、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするもの」のことで、受水槽の有効容量が10㎥を超えるものを指します。

有効容量が10㎥以内のものは「小規模貯水槽水道」と呼ばれ、簡易専用水道とは区分されており、水道法の適用対象にはなりません。
ただ、各自治体の条例や要綱によっては小規模貯水槽水道の清掃・検査の頻度が決まっている場合がありますので、施設のある都道府県の条例や、市町村の規定を確認しておきましょう。

水道法施行規則

水道法第34条の2 一項にある水道を管理の方法として、水道法施行規則第55条があり、簡易専用水道の管理について以下のように定めています。[注2]

● 水槽の掃除を毎年一回以上定期に行うこと
● 水槽の検査等有害物、汚水等によって水が汚染されるのを防止するために必要な措置を講ずること
● 給水栓における水の色、濁り、臭い、味その他の状態により供給する水に異常を認めたときは、水質基準に関する省令の表の上欄に掲げる事項のうち必要なものについて検査を行うこと
● 供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知つたときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知させる措置を講ずること

また、同56条では、水道法34条の2で定める検査についても、「毎年一回以上定期に行うもの」と定めています。

建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管法)施行規則

ビル管法では、飲料水に関する衛生上必要な措置等として、施行規則第4条において飲料水の衛生ん関する衛生上な措置等が定められている。

第4条の3で水道法の定める水質検査を行う(15項目;6ヶ月以内ごとに1回、消毒副生物を毎年、測定期間中に1回)

第4条の7では、「遊離残留塩素の検査及び貯水槽の清掃を、それぞれ七日以内、一年以内ごとに一回、定期に、行うこと」と定めています。[注3]

以上2つの法律により、マンションやオフィスビル、病院、学校などに設置されている有効水量10m3以上の貯水槽は、設置者の責任に関する事項を明確に定めた上で、年に1回、定期的に清掃・水質検査・検査機関による検査を行うことが義務づけられています。

貯水槽の清掃・検査を怠った場合のリスク

貯水槽の清掃・検査を怠った場合のリスク

貯水槽の清掃や検査を怠った場合、以下2つのリスクが想定されます。

1. 法違反による罰則

水道法第34条の2第2項(簡易専用水道の検査に関する項目)に違反すると、同法第54条の規定により、100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。[注1]
この罰金は、施設の管理会社だけでなく、施設の責任者またはオーナーにも科せられるものですので注意が必要です。

2. 衛生上の問題

貯水槽の清掃・検査を怠ると、貯水槽内にサビによる腐食や藻が発生する可能性があります。
また、貯水槽が整備不良や経年劣化などで不具合を起こした場合、外部から虫や異物などが混入し、水槽内の水が汚染されてしまうおそれがあります。
衛生上問題のある水を施設内に供給すると、それを飲用した人たちの健康を害するおそれがあり、場合によっては賠償などのトラブルに発展する可能性もあります。

貯水槽清掃の基本的な流れ

貯水槽の清掃は業者に依頼しますが、清掃を行うにあたっては、施設責任者やオーナーも事前にいくつかの準備を整える必要があります。
貯水槽清掃の依頼から清掃完了までの基本的な流れをご紹介します。

1. 清掃業者の選択・依頼

貯水槽の清掃を請け負っている業者は複数存在しますが、候補を絞り込むにあたって特に重視したいのが「建築物飲料水貯水槽清掃業」の登録の有無です。

建築物飲料水貯水槽清掃業の登録とは、昭和55年の法改正によって設けられた「建築物における衛生的環境の確保に関する事業の登録」のひとつで、建築物の環境衛生上の維持管理を行う事業者が、適切にその業務を遂行するように資質の向上を図っていくことを目的としたものです。[注4]

建築物飲料水貯水槽清掃業の登録を受けるには、一定以上の物的・人的基準を満たしている必要があるため、必要な機材や人材がそろっているかどうかを判断する材料となります。
未登録の業者でも貯水槽の清掃を行うことは可能ですが、必要な機材・人材を確保しているかどうかを事前に知る術がありませんので、登録事業者に依頼した方が安心です。

2. 貯水槽清掃および断水の告知

貯水槽が単槽の場合は清掃している間、施設内に水を供給することができなくなります。そのため、貯水槽清掃の日程が決まったら、施設利用者に対し、貯水槽の清掃を行う旨と、それにともなう断水が発生することを、清掃中、清掃終了後の注意事項を掲示板やビラなどを使って事前にしっかり告知しておきましょう。

貯水槽が複数あり、断水を伴わない清掃としても、清掃を実施する際は掲示板やビラなどで事前に告知をしましょう。
事前告知は貯水槽の清掃が始まる2~3週間前をめどに行うのが一般的です。

3. 清掃前の水質検査

貯水槽を清掃する前に、清掃前に簡易水質検査が実施されます。貯水槽から供給される水の残留塩素、味、色、におい、にごりの有無などを確認することで、現在の水質を確認することができます。

4. 断水・排水を行う

一通りの検査が終わったら、水槽への補給水弁を閉めて、貯水槽内に残った水を排出します。この時点で、単槽式の貯水槽は清掃が完了するまでは断水し、施設内の水が一切使えなくなります。

5. 貯水槽の清掃

排水が完了して貯水槽内が空になったら、作業員が貯水槽の中に入り、機材を使って清掃を行います。使用する機材は業者によって異なりますが、ブラシやたわしなどを使ったこすり洗いと共に、高圧洗浄機などを使用することもあります。

6. 貯水槽の消毒

貯水槽内の清掃が済んだら、衛生的な状態を長持ちさせられるよう、塩素を使った消毒を行います。消毒は、有効残留塩素濃度50~100㎎/ℓ の次亜塩素酸ナトリウム液を散布し30分以上放置、その後水洗い、この作業を2回以上繰り返します。

7. 貯水槽への水張り・断水の復旧

消毒作業が完了したら、水槽への補給水弁を開けて貯水槽に水を張り、断水を復旧させます。
最後に、清掃後の水質をチェックして、残留塩素の値に異常はないか、水の味・色・においなどに問題がないかを確認し、清掃前の水質検査の結果と合わせて施設責任者またはオーナーに作業報告を行います。

貯水槽の清掃・検査は年に1回、定期的に実施しよう

有効容量が10㎥を超える貯水槽は、年に1回の頻度で清掃・検査を行うことが法律によって定められています。違反すると1,000,000円以下の罰金が科せられる可能性がありますので、施設責任者やオーナーの方は、施設のメンテナンス計画に貯水槽の清掃・検査を必ず盛り込むようにしましょう。

有効水量が10㎥以内の小規模水槽水道に関しては、法による規定はありませんが、自治体によっては条例で清掃・検査に関する規定が設けられていることがあります。
また、貯水槽の清掃・検査を怠ると、貯水槽内の水が汚染され、施設利用者の健康を害するおそれがありますので、法や条例に規定のない小規模水槽水道であっても、年に1回は業者に依頼して貯水槽の清掃・検査を行うことを心がけましょう。

[注1]e-Gov法令検索:水道法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332AC0000000177
[注2]e-Gov法令検索:水道法施行規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332M50000100045
[注3]e-Gov法令検索:建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=346M50000100002
[注4]厚生労働省:建築物における衛生的環境の確保に関する事業の登録について
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei11/03.html

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